大学入試センターは,再来年1月のセンター試験で導入される英語のリスニングテストのため,抽選で選んだ高校2年生約4万人に参加してもらって,試行テストを今日行なったようだ。(ニュース検索)
センター側も,今回のリスニング導入には並々ならぬエネルギーを注いでいるようで,とにかく試験が問題なく遂行できるよう,この試行テストから得られるデータも参考に準備を整えたいようだ。今回のように台風がやってくるなどのアクシデントは,季節が違うとはいえ何があるかわからないという点で,よい教訓であろう。その他,試験官の足音や消し忘れた携帯電話などの周囲の音や飛行機等の騒音,再生機であるICプレーヤーの故障・操作ミス・配布や回収そして輸送にいたるまで,完全掌握しなければならない。
すでに報道でも紹介されているように,リスニング問題を再生するために使うのは,専用につくられたICプレーヤー。再生は一回だけで巻き戻しは出来ない。映像を見ると,問題の記録されたICカードと再生機は別になっているのだが,どうもこのプレーヤーを再利用する気はないとの報道。約2000円のコストがかかる再生機が再生されずに破棄されるとは,いかにもコンビニ時代である。
再利用のために再生機の動作チェックをするための経費が馬鹿にならないのは想像できるし,新規に製造購入した方が安価であることも予想は出来る。何より,センター試験におけるリスニングを滞りなく実施するためには,再利用で発生する予知の出来ないリスクを背負うことは,大学入試センターという組織として出来るわけもない。日本の組織なんだから,それが自然な発想なのだ。
ただ,けれどもと思う。人生を左右さえしかねない大学入試センター試験は厳正な環境で進行しなければならないという,そこの部分でのお話しならば,それはそれで納得できる。けれども,2000円相当のものを再利用無しだなんて環境に優しくない,企業には垂涎ものの話だけがどうして流れるのだろう。ちゃんとICプレーヤーが回収後に,どのようにリサイクル施設へ運ばれて,資源の再利用に回されるのかについても,大々的に宣伝してもらわなくてはなるまい。現実的な選択肢をとる以上,そういうところまで情報公開してナンボである。
ちなみに米国で高校生の言語的能力と数学的能力を測定するSATでは,リスニングをどうやっているか調べてみると「カセットプレーヤー・ポリシー」というページで説明されているように「自分で持ってきなさい」方式である。もちろん大学入試センター試験とSATでは,実施形態が違うことを考慮しなければならない。日本のカセットプレーヤー普及状況がどうなっているかも勘案しなければ。でも2000円上乗せするくらいなら,受験用に買わせる方式にした方が,一般市場が活気づいていいんじゃないか?とも思う。(専用プレーヤーつくってるのはどこの企業だろう。台湾か中国製かな。そんな余計な詮索も出てくるし‥‥)
TOEFLでもカセットプレーヤー持参方式のところもあるようだ。CBT方式だとコンピュータでリスニングテストが出来るようにもなっていたと思うが,これも大学入試センター試験のような大規模一斉試験とは簡単に比較できないか。
願わくは,遠くない将来に,こういった脅迫的な状況が緩やかになるような社会意識が浸透することを願うほかない。最近は,そんな感じのことばかり気になっている。
毎日インタラクティブ教育ニュース記事「センター試験:リスニング試行テストの手順」が公開されていた。
投稿情報: りん | 2004年10 月13日 (水) 23:56