東京大学で日本教育学会の臨時総会と緊急シンポジウム「教職プロフェッショナル・スクールの可能性と危険性」が行なわれた。教職専門職大学院の福井会議に出席した縁もあるので,シンポジウムもそうだが,ついでに臨時総会にも出てみようと思って日帰り東京出張をした。
臨時総会とシンポジウムは,どちらも大きな転換にかかわる事柄だった。臨時総会では,日本教育学会が社団法人化することを決定した。会員とはいえ学会運営なんてお任せなのだが,たまにこうして話を聞くと興味深い。とにかく夏の総会に向けてさらに準備をすすめていくとのこと。定款案はさらに見直されるし,現在の会則を運営規則として移行させる作業もあるらしい。ああ,それは学会事務局が広報することですか,はい。
シンポジウムの方は,やはり微妙かつ淀んだ雰囲気であった。詳細はまた改めてご報告したい。なにしろ話を突き詰めようとすればするほど,プロフェッショナル・スクール(専門職大学院)以前の問題を追及することになり,つまりこれまで教員養成を担ってきた人々や自分たちへの批判合戦となって,くら〜い気持ちになるのだ。その上,あの場に集っている人々は,専門職大学院に絡んだ様々な問題意識を持ってそこにいる。シンポジウムの内容が生の教員養成現場とリンクしていないことを嘆く(確かに僕だってちゃぶ台をひっくり返したくなる)のは簡単なのだが,それぞれの問題意識をもう少しかみ合わせていく必要があると思う。ああ,また今度書こう。
シンポジウムに先立って,東京大学総長・佐々木毅先生のスピーチがあった。正式な発表や報道がなされるとは思うが,東大総長の公式見解として次のようなものがあった(注:文言はこの通りではない)。「東京大学では,現在の学力水準を問題視している(いまの学力水準は困る)」「このような中等教育の現状では,国際競争で勝てない」「専門職大学院の議論についても,大学を挙げて注視しているが,ネガティブなものを取り除くようなアプローチでは不十分」「積極的なメリットがなければリソースをかける意味はない」「(専門教育において)もっと知識を増やすことに腐心すべき,それなくしてハウツーだけではダメである」など。
斯様な認識を東京大学では全学的に議論しているとのことで,その結果,専門職大学院の文脈とはまったく別に,初等中等教育の水準を引き上げるための積極的な取り組みをする必要があるとの認識に達したようだ。そして今後,東京大学としてそのような取り組みのための組織を作っていくような体制になりつつあるという。
このあと,佐藤学先生から,全学的なバックアップのもとで初等中等教育の高度化を推進するための機構が出来るという補足があった。正式名称などはまだわからないが,教育研究の分野に野心的な研究センターが出来るということが事実上発表されたというわけだ。
外部の人々にすれば「また東京大学だけが,どうしてそういうことできるかなぁ〜」という気持ちもないわけではないと思う。ただ,それはいかにも東大らしいアプローチというだけであって,そんな構想でなくても,自分たちの大学機関で出来る取り組みから始めればいいのである。だから,東京大学が初等中等教育に対して何かしら本腰を入れたというところの波を上手に捕まえて,全国で地道な取り組みが起こればいいのだと思う。
戯れ歌。「東京大学、岩波、朝日。アメリカ、文科省、NHK」
おそまつ。
投稿情報: 同業者N | 2005年3 月28日 (月) 14:04
^_^ おみごと。
投稿情報: りん | 2005年3 月29日 (火) 00:11