広島へ出掛けた。ご存知の通り,福岡沖玄界地震が起きた直後。私が乗った新幹線も状況の推移を見ながら運転するような事態であった。ちょっと無謀な気もしたが,予定は決まっていたから,とにかく向かう。これに似た気分を以前にも味わったなと思ったら,テロ事件の一年後に出掛けたNY行きのときだ。
広島での出来事や途中で寄った場所のお話は,少し後で書くとして,帰宅するために乗った地下鉄で,ある吊り広告を見つけた。ボーッと見ていた週刊ポストの見出しのその隣り。「子育てに迷ったり,悩んだり,困ったら,保育所へ」という見出しに次のようなことが書いてあった。
(1)子育てに関して誰かに相談したい。発育の違いについて誰かに教えて欲しい。→保育士がご相談をお受けします。
(2)通院しなければならない。急用が出来てしまった。子どもを誰かに預かって欲しい。→保育所で一時的にお預かりすることが出来ます。
そして「これからの保育所は大人も育んでいきます」のセリフとともに,子どもと若夫婦が園児帽と鞄を持っている写真が添えられている。厚生労働省の「もっとみんなの保育所へ。」広告。
細かい文面はうろ覚えなのでまた確認していただきたいが,とにかく突然出会ってビックリしてしまったのだ。確かに保育所(一般的には保育園として聞き慣れているかも知れないが‥‥)は,子育て支援の機能を持つようになり,地域に向けてサポートをしている。これは子どもを入所させている保護者にだけではなく,地域のすべての人々に提供されているサービスなのだが,なかなか知られていないのも事実。そこでこうした中吊り広告などのPRが必要というわけだ。
ところが,まぁ,インターネットで探してみても,この広告に関する情報は皆無。当の保育所には,当然情報がいっているのかも知れないが,このPRは,なかなか微妙な影響も与えそうだ。
一つには,保育士の専門性のアピールをして専門家として相談をお受けするというわけだが,相談する側としては,もう少し具体的な段取り解説が欲しいところだ。というのも,訪問してみるとわかるが,保育所というのは入り口が千差万別で職員室にたどり着くまで大変なのである。それに外部のお客さんを迎え入れる部屋やスペースが確保されているとも限らない。もちろん支援センターとして形を整え始めている保育所は増えてはいるのだが,多くの保育所はまだまだウェルカムな状態ではないと思う。
二つめには,一時預かりをPRしている点。これも本当に急用があって預けたい事態になった人々には有難い支援なのだが,これを逆手にとって,都合よく利用してしまう人たちにどう対処するのかは課題だろう。各保育所でルールのようなものはあるとしても,無理強いをしてくる利用者対応をうまく処理できるのかどうか。保育現場にとっては頭痛のタネだ。
厚生労働省は,こうした子育て支援の条件や環境整備を強化しつつ,保育士資格の取得に関しても養成校の教育水準維持と保証の強化に乗り出している。専門家による子育て支援体制を整備するためには,専門家としての保育士の養成が不可欠。それはいま滞りつつある保育士養成課程の四年制化(四大化)を今一度推し進めようとする動きなのかも知れない。
そんなことにも思考を逸脱させながら,この広告は電通(広告代理店)の作品なのだろうか?とぼんやり考えていた。
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