中央教育審議会の義務教育特別部会というグループが18日と19日の2日間にかけて,合宿審議した。その場で報告されたのが,「義務教育に関する意識調査[速報]」だという。
小学4〜6年生
中学1〜3年生
小学1年生〜中学3年生までの保護者
学校評議員
小中学校教員
都道府県市町村の教育長
都道府県市町村の首長
という7種類の対象者に義務教育の様々な事柄について質問紙調査したものである。実施したのは平成17年3月もしくは4月まで。総合的な学習の時間に関する受け止め方などを質問した点で大変注目されている。実際,マスコミ報道のネタとしては垂涎の的だろう。データとしては基本推計表を参照すれば,ある程度の数値がわかる。それをもとに「わかりやすく」まとめた速報が今回提示されたわけである。
これをさらに,いろんな条件を交わらせながら詳しく分析する作業によって,「わかりやすく」したために犠牲になった「よりまとも」な解釈を得ることができるというわけである。それが10月を予定している最終報告書というわけだ。
なので,今回の速報に関する報道内容は,「まずは全部疑ってかかる」というのが大事である。
たとえば質問票には「「総合的な学習の時間」の取り組みについて、どのようにお考えですか。 」という項目がある。これについて朝日新聞なんかでは,教育長は8割,保護者は7割が肯定派で最も多い。一方,中学校担任では否定派が過半数を占めた,とか書いている。
これは「結果の速報にいて」(PDF)の8頁に掲載されているグラフをもとにした「わかりやすい」説明だ。でも,ここにはいろんな要素の絡まり合いが隠れていて,「わかりやすい」分だけ難しい。
たとえば‥‥
・保護者の年齢層,教員の年齢層の違いは気にしなくていいのか?
・教員のうち「担任」だけを取り出したことは,影響ないのか?
・調査対象校の数が保護者25校,教員1219校となっているのは問題ないか?
(ちなみに,回収数は保護者6742,教員2503であった。)
・回収率の格差などを考えたとき,妥当性はどうだろうか。
・保護者は「母親」だらけ。一方,教員は「男性」多い。問題はないのか?
その他いろいろ。
この「わかりやすい」速報の正確さや,調査自体の妥当性について,素人としても懐疑的になる数字や文章が見えてくる。そもそも調査速報自体に「調査報告を見るに際しては,以下の点にご留意ください」(目次頁)として,調査の特徴を記している。その部分については割り引いて読んでね,ということだ。
それから中間報告書内の調査票見本を見て不思議なのは,教員と保護者とで,年齢を答える際の回答区分が異なっていることだ。理由があって異なるのかも知れないが,同年齢区分で立場が異なる者の回答を比較することができない点は困る。なんでこうなっちゃったのか。
こういう○付けて答える調査で得られたデータを「定性データ」というのだけれど,一見パーセンテージなどの数値で示されるので多い少ないで捉えられがちである。ところが実際には,選ばれた選択肢の項目毎に深〜い背景があって,それを細かく分析しないと「よりまとも」な説明ができないのである。数値が大きければ良い,小さいと悪いとは,一概に言えないのだ。
まだ他にもあるたくさんの質問について,ゆっくり目を通せていないが,中には素直に受け取ってもいいものなんかもあるだろう。それでも,やはり慎重になることは大事だ。もう少し読み込んだら,また何か書いてみたい。
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