全国教育委員会事務局改革推進連絡連携協議会は,4月1日付で声明を発表した。どうやら,すっかりこんがらがってしまったこの国の教育問題の原因を整理した上で,抜本的な改革をすることに本気になるようだ。
ご存知のように,教育の問題は様々な要素が複雑に絡み合ったり,同じような問題に見えても個別のケースで原因や採るべき対処方法が異なる場合がある。しかし,マスコミを始めとして,人々の問題の捉え方は単純化する傾向にあって,それがまた教育問題の複雑化に拍車をかけるもとともなっていた。
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そこで先の改革推進連絡連携協議会は,教育行政の中間或いは根幹に位置するともいえる教育委員会事務局として,問題の所在を教育制度の側面から整理し,教育委員会事務局自身の問題点を明らかにした。
この目的は,教育議論の地平をクリアにすることによって,教育委員会事務局が取り組むべき改革を明確にすることである。一方で,何でもかんでも教育委員会事務局のせいだと問題をごっちゃにして批判する世論を牽制する意味合いも大きい。このままでは教育委員会事務局の予算カットや人員削減,果ては廃止論まで具体化しかねない,との危機感が教育委員会事務局側にある。
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そこで声明では,今月96億円をかけて行なわれる全国学力テストへの完全不参加を表明。不足分を地方が補うことを条件に予算残金で,全国都道府県市町村の教育委員会事務局と地域社会との関係など徹底的な教育実態調査を行なうことを決定したとある。
この機会に一斉に膿を出し,地域の実情を明確にした上で地方自治体毎の教育行政に役立てることを提案している。また国家に対しても,そのような実証的なデータをもとに予算措置を行ない,教育予算自体の増額を求めていく姿勢をハッキリと表している。
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これまで国レベルで描かれた教育施策は,地域社会の実態も踏まえず,また伝達過程における様々なミスコミュニケーションの発生とも相まって,現実の教育をよりよく変化させるのに十分な結果を出せてこなかった。
21世紀になって,地方分権の時代となり,いよいよこの問題に徹底的なメスを入れる必要があるとの問題意識が,教育委員会事務局や各地域の教育長もしくは首長のもとで醸成された結果,このような声明へとつながったようだ。
これは現事務局や首長達による統一地方選挙へのパフォーマンスであるという見方もあり,まだまだ予断を許さないが,いずれにしても地方が本気になって教育問題に取り組むことが大事である,ということが形になった声明としては大きく評価できるのではないだろうか。
今回の声明に対する反応として,全国保護者教育力向上委員会連絡会からも保護者の立場から協力できることを模索したいとのコメントがあったり,教職員取組改善連合などからも前向きに受け止めることが伝えられている。また一部の政府筋は,各レベルにおける緊急会議の必要性を示唆しており,こうした好機を作り出せなかった教育逆再生会議の解散と各省庁が採るべき前向きな対応策などの検討を始める必要があるとの考えが出始めていることを明らかにした。
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平成19年度,やっと教育が良い方向へ動き出すきっかけの年度となりそうだ。
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