30日(月曜日)の主菜「特別講演」とは,特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会が設立一周年を記念して行なった特別講演会のことであった。文部科学省初等中等教育局参事官の中川健朗氏,社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会専務理事の久保田裕氏,独立行政法人メディア教育開発センター理事長の清水康敬氏という豪華な方々の講演である。
ところで,6月2日〜4日まで,毎年恒例でお馴染みの大規模な情報教育関連イベント「New Education Expo」が東京で行なわれる。毎年行きたい行きたいと思い続けているのに,あれこれ事情で参加できていないのが実情。今年も怪しそうなのだ。
ところが,今回の特別講演のお三方は,New Education Expo2005にも登場される予定。ならば,先取りの美味しいとこ取りでブロードバンドスクール協会の特別講演会に参加してしまおうということにしたわけだ。
インターネットから流れる情報を介して,お三方については存じ上げていたけれど,どんな温度をお持ちの方かは,会ってみなければわからない。そういう意味で,直接お話を聞いて,その語り口や考えに接することができたのは大きな収穫だった。講演会の後には,懇親会が設定されていたが,協会設立一周年のパーティーでもあることだし,新幹線の時間もあることなので,懇親会には参加せず。その代わり,質問をすることにした。(ちなみに講演会の様子のページに映っている質問者らしき人物は,私です。)
お三方それぞれに質問を投げかけて,お答えを返していただいた。その質疑応答内容や講演会自体の様子のレポートは次回。実は私一人で質問時間を消化してしまったので,大変申し訳ない気持ち。もともと時間がおしていたとはいえ,罪滅ぼしも兼ねて,私から見た講演会や,情報教育の風景をご報告したい。
【2005.06.01追記】
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中川参事官の講演内容は,文部科学省が国のIT戦略「e-japan重点計画」との関連でどのような予算的措置を行ない,地方自治体へと働きかけてきたかを,ご本人も普段の官僚然とした語り口ではないと自覚しつつ,熱を込めて語られていた。その内容のポイントはこうである。
・国家戦略を実現するための予算は確実に措置されている。H17年度は2150億円。
・ITによって充実した「2005年の普通教室」に関するイメージ。
・2006年3月までがタイムリミット。
・交付税全体が削減されている中で,2005年度まで,情報化の予算措置額は確実に増加。
・しかしタイムリミット後,措置が継続する可能性は(通常は)無い。あり得ない。
・総務省通達文書において「教育情報化対策」を明確に記載。これは特別な重要性を意味。
・ところが計画達成状況は芳しくない。多くの地方自治体における進捗は遅れている。
・2006年3月までに達成するために「情報化推進協議会」が設立され,情報をwebで公開。
・都道府県教育委員会に向けた文科省からの所管事項説明映像のweb公開は前代未聞。
・現場や地域等がネットワークを組み,公開されたデータを使って首長への説得を期待。
・やる気さえあれば教育の情報化ができる状態。活用できるコンテンツは用意されている。
いやはや,素人にはまったくわからなかったが,文科省などは省庁の立場として可能な限り,しかも異例中の異例という手段をも駆使して「教育情報化」の計画を推進させようとしていたわけだ。その明らかすぎるほど明らかなメッセージを,地方自治体の首長たちや教育委員会は,交付税であることをいいことに,無視していたということになる。
もちろん中川参事官は国の立場だから,話を若干割り引いて聞く必要があるかも知れないが,それにしても示されたデータが偽りでない限り,そういう全体構図であることには違いない。
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久保田氏の講演内容は,穏やかな調子でソフトウェア管理のことから話し始めた。デジタル化,ネットワーク化の中での法と教育と電子技術によって,この20年間のソフトウェア管理の世界は前進してきたのだという。以下は,内容のポイント。
・ソフトウェア管理をしっかりしているところは,個人情報保護についてもしっかり移行できる。
・協会(ACCS)における情報流出問題に関する事例。流出データの完全回収は証明できない。
・デジタル情報をどこまで管理するのか,人間の注意能力を考えたとき限界があることも明らか。
・ケータイ電話の普及は管理を難しくした。詐欺情報などから子どもたちを守ることができない。
・情報管理の予算コストを考えても,知恵を絞らなければならない。100%はあり得ない。
・まず「法ありき」で考えてしまうと,限界がやってきて,自分の首を絞めてしまう。
・子どもたちの生命身体が守られるのであれば,個人情報保護という考えは後退しえる。
・地域,先生,行政などがどういう管理をしていくかのコンセンサスや知恵を出す必要性。
・個人情報の有用性を踏まえて,リスクをいかに低減するかを考えること。
・学校の住所録や緊急連絡網に難癖をつける少数の親の意見を疑う必要性
・親同士や先生が膝を詰めて話し合えば,(住所録廃止のような)馬鹿な考えは一蹴されるはず
・モラルと法の違い。コピーはモラルの問題ではなく法の問題で違法行為。
・様々な事例紹介。中古ケータイ内の情報の流出問題。
・なんでもかんでもコンピュータでやるということを考え直す視点も必要である。
・個人情報について,本人個人が管理しコントロールする権利と社会的有用性のバランスを保つ
・バランスを保つ範疇において,教師がバランスに関する裁量権を持ってもよいのではないか
最後には情報モラルに関して述べられて,「よき市民」の育成を皆で取り組むことを強調された。そのため協会では様々な情報提供ができると締めくくられた。
大変豊富な事例をもって話をされていた。そして個人情報保護法に絡んで学校現場などが頭を悩ませてきた児童生徒の個人情報の扱いについても,バランスに関する裁量権を教師が持ってもいいのではないか,有用性を犠牲にしてまで個人情報保護法に杓子定規に沿おうとするのは自分の首を絞めているという指摘をされたのは印象的だった。つまり,常識的な範囲,たとえばクラスで配る名簿や住所録,連絡網においては,バランスをとるためにも「個人情報保護法を遵守しなければならない」という考え方が後退してもいいのではないかという考えを述べられていたことに勇気づけられた。
ただし,この発言内容は,あくまでも学校や地域家庭,あるいは役所などとのコミュニケーションの上でコンセンサスを得たり,お互いが知恵を出し合うという努力を前提としている。
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清水氏の講演内容は,(以下つづく)
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