東京臨海副都心(つまりお台場)にある東京ファッションタウンビルで行なわれた「NEW EDUCATION EXPO 2006 in 東京」に出かけた。これまでも東京や大阪や名古屋で行なわれていたが,いつも都合が悪かったので,今回初参加である。
会期が3日もあるし,どのセミナーも関心があるのだが,さすがに全日出席するのは大変。というわけで,2日目の基調講演を目当てに出かけることにした。午前中は企業各社の展示を軽く眺めてみた。人が少なかったこともあって,あちこちからパンフレットを差し出されて大変である。あのね,売り込みたい気持ちは伝わってくるのだけど,ゆっくり眺める余裕を与えないと素通りされることも理解しようね。ずらっと並んでいる説明員の視線を浴び続けるこちらは,思った以上に気恥ずかしいのだから。
EXPOという名前から,私なんかはだだっ広い場所を想像していたのだが,実際にはわりとコンパクトにまとまった会場だった。もちろんそれでもこうした催事としては規模の大きい方だと思うけれど。
午後になれば会場はかなり賑やかになってくる。スーツ姿が多いが,カジュアルなクールビズ風の人たちもいる。スーツの場合,靴下の色が白ならば教育関係者,黒系ならば企業か行政関係者が多いということも見えてくる。夕方あたりになると若い世代のラフな格好の入場者もちらほら見かけた。
今回,次の講演を聴くことが出来た。
山西潤一氏 「これからの「教育の情報化」に必要なこと」
坂元昂氏 「世界の「教育の情報化」緊急レポート」
鳥居泰彦氏 「世界と日本の教育改革」
山西先生は日本教育工学協会の会長で,2005年までの取り組みとポスト2005における課題を丁寧に解説された。目新しい内容とはいえないとしても,地道に説いていかなければならない部分の話だったと思う。山日先生曰く,教育の情報化という目標達成のために私たちは「授業モデルの蓄積と共有」「発達段階に合わせた能力形成プログラムの開発」「校務処理の改善意識」に取り組んでいかなければならない。思うに,これは教育の基本に徹するということであり,新しい時代にふさわしい教育の姿を再考しようということなのだろう。
日本教育工学振興会会長の坂元先生は面白かった。実は,動く坂元先生を初めて見たのである。流行りの映画を見ていないと同じ調子で,なかなか遭遇する機会がなかったのだが,今回初めて講演をお聞きして,その人柄の面白さにすっかりやられてしまった。なるほど,大物は独特なウィットをお持ちである。その一方で,なるほど日本の教育工学界隈が行政に対して強引さが無いのは,皆さんお上品だからだなとあらためて理解した次第である。つまり,地方の議員や公務員の人たちに坂元先生たちみたいな人たちが口にする上品かつ痛烈な皮肉が理解できないか通じないんだなということである。
坂元先生の講演は,英国やアメリカの話を中心として,諸外国の情報化の前進ぶりを報告して,いかに日本の情報化が足踏みしているかを浮き彫りにしていた。けれども決して「日本が遅れている」と先生は言わないのである。そして最後に日本の取り組みを紹介して,「世界中を学校に」という学校概念の変革の夢を描いたあと,「やりゃできる」と聴衆を激励するのである。終始明るい口調で,海外の事例を嬉々として紹介されている様子から,日本の現状を嘆くとかの空気は全く感じられない。
けれども,講演の内容をよくよく考えてみると,「興味深い講演でした」と他人事のように言えない。なにしろ「お金も力もあるのに,やってないのはあなた達ですよ」と坂元先生は問いかけているのである。ああ…。
鳥居先生は,中央教育審議会の会長。日本の教育改革について,その中心にいる人物である。講演の内容は,世界の教育行政の動向を紹介して,義務教育費国庫負担の顛末,教育基本法改正に関する本当の争点など。これも他人事では済まないのだが,興味深いないようであった。長くなりそうだからあらためて書こう。
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